2年前から、友人がインドに単身赴任をしている。私は一度もインドに行ったことがなかったので、いい機会だと思って遊びに行くことにした。
デリーにいる間は、その友人の家に泊めてもらうことにした。ところが、滞在中、休みがないのだという。1年に1度しかない「ファミリーデイ」という会社の催しと重なってしまったらしい。
「ファミリーデイ」とは、通常は休みの日曜日に、グラウンドを貸し切って、社員の奥さんや子どもなども招いて、みんなでご飯を食べたり、ゲームやスポーツを楽しみながら、交流する日らしい。観光にするかどうか迷ったけれど、こんな機会もないだろうと思って、友人に無理を言って特別に入れてもらうことにした。
車でグラウンドに着くと、すでに大勢のインド人たちが集まって、ワイワイやっている。友人は車の部品を作る工場の指導者としてインドに来ている。この日は、正社員のみが参加しているらしく、日本人は友人を含め2人、それ以外は全員インド人で、300人あまり。それぞれ家族も来ているので、500人くらいだろうか。
男性は、動きやすいデニムにシャツというようないでたちがほとんどだが、女性は、色とりどりのサリーを着てる人も多く、鮮やかで美しい。子ども達もおめかしをしてきている子が多くて、かわらしい。
日本人が珍しいのだろうか、ものすごく凝視される。笑い返すと、宇宙人でも見るかのような目で、もともと大きい目をさらに大きくした。
何人かを紹介してもらった。みんな少しはにかんだような笑顔で、名前を教えてくれるが、難しすぎて覚えられそうもない。
突然、「マダム、マダム」と呼ばれ、携帯電話で自撮りする風のジェスチャーで「OK?」と聞かれた。どうやら一緒に写真を撮りたいらしい。「OK」と返事して、写真に入った。すると、周りにいた人たちも、自分の携帯電話を取り出し、いっせいにこちらにやってきた。次々に写真を撮られる。全員ツーショットが欲しいらしい。あっという間にインド人たちに囲まれてしまった。とても嬉しそうにしてくれるので、断れず、しばらく写真大会になってしまった。
そうこうしていると、マイクでしゃべる声が聞こえてきた。いよいよゲームが始まるらしい。
1つ目はイス取りゲーム。
グラウンドの一角に、おもむろに円形にイスが並べてある。子ども達がその周りをぐるりと囲んだ。ルールは、日本のゲームと全く同じ。ただ、明らかに違ったのは、リズム感が半端ないこと。イスの周りを回るときに、音楽に合わせながら軽快なステップと手でリズムを取る様子は、子どもとは思えない身のこなしだった。順調にこどもの回は終わり、次は女性の番らしい。これは、と思い、参加してみることにした。
音楽が鳴る。歩く。音楽が止む。イスに無事座れる。......実は私は、子どもの時から気づいていたことがある。中央にマイクを持った司会者のような人が実況中継をしていて、その人が腕をあげると音楽が止まるのだ。私は回りながら、常にその人を見ていた。腕を上げそうになったらイスのところでゆっくり歩く。それを見抜いていたので、順調に勝ち進んでいた。イスの数もかなり減ってきた。
ところが、人が減っていないように見える。音楽が鳴る。歩く。音楽が止む。イスに座る。座れなかった人がいる。イスが減らされる。音楽が鳴る。歩く。座れなかった人も歩いている。音楽が止む。イスに座る。そしてまたイスに座れなかった人も、シレッと参加する。
なんということ! それじゃあ意味がない。おかしくて笑ってしまったが、人数が減らないことに気づいた司会者が、やっとイスに座れなかった人を見極めて、「輪から外れなさい」と注意し始めた。ところが強気の女性は、いったん外れたふりをして、音楽が鳴るとまた参加しようとする。
さすがインド人は心が強い!と唸ってしまった。そんなことを考えていると、私はついにイスを逃し、負けてしまった。
次に始まったのは綱引き。
こちらは、基本男性が参加するようである。みんなわーっと綱の周りに集まり、適当に持ちはじめた。え? チーム分けとかしないの?と思ったけど、そんなことはどうでもいいようである。適当に持って、急に適当に引っ張り合いが始まるので、人数が多い方が勝つ。じゃあオレはあっちへ行く。など適当に移動しはじめる。適当に引っ張る。人数多い方が勝つ。こんな具合を何度か繰り返し、結果、ほとんどの人が自分が勝ったと言い出した。
勝った人には何かがもらえるらしく、賞品を渡す人の周りに人だかりができる。何か特別なものを持っているようには見えなかったが、拾集がつかなくなって、賞品係が逃げ出すと、みんながついて回り、その人を中心に、大きな人の塊がグラウンドをウロウロし始めた。しばらくそれで大騒ぎ。その横で、また写真攻めも始まり、私も別の塊となってウロウロしていた。
再び、なんとか振り切って、落ち着くと、グラウンドでは同時多発的にみんなが適当に好きなことをやり始めていた。サッカーをしていたので見ていると、こちらも特にチームはないようである。全員がボールを追いかけて、近くのゴールに入れるのみ。キーパーはいない。でも、全員めちゃくちゃ真剣だ。ボールを蹴りたい一心で動いている。そして笑って見ている私は、またうっかり写真攻めに遭ってしまう。
ほとんどが私と同年代というのが驚きだ。あまりにインド人が無邪気なことに感心してしまった。どんなゲームにも真剣で、思い切り楽しんでいる。ルールは無用! 何が勝ちかどうかは自分たちで決める! 最高に愉快だった。
私は写真攻めに疲れてしまい、先に退散したが、後で友人に聞くと、最後に表彰式があったらしいのだが、多くの人がゲームに勝ったと言い張り、ものすごく長い長い表彰式となったらしい。
デリーにいる間は、その友人の家に泊めてもらうことにした。ところが、滞在中、休みがないのだという。1年に1度しかない「ファミリーデイ」という会社の催しと重なってしまったらしい。
「ファミリーデイ」とは、通常は休みの日曜日に、グラウンドを貸し切って、社員の奥さんや子どもなども招いて、みんなでご飯を食べたり、ゲームやスポーツを楽しみながら、交流する日らしい。観光にするかどうか迷ったけれど、こんな機会もないだろうと思って、友人に無理を言って特別に入れてもらうことにした。
車でグラウンドに着くと、すでに大勢のインド人たちが集まって、ワイワイやっている。友人は車の部品を作る工場の指導者としてインドに来ている。この日は、正社員のみが参加しているらしく、日本人は友人を含め2人、それ以外は全員インド人で、300人あまり。それぞれ家族も来ているので、500人くらいだろうか。
男性は、動きやすいデニムにシャツというようないでたちがほとんどだが、女性は、色とりどりのサリーを着てる人も多く、鮮やかで美しい。子ども達もおめかしをしてきている子が多くて、かわらしい。
日本人が珍しいのだろうか、ものすごく凝視される。笑い返すと、宇宙人でも見るかのような目で、もともと大きい目をさらに大きくした。
何人かを紹介してもらった。みんな少しはにかんだような笑顔で、名前を教えてくれるが、難しすぎて覚えられそうもない。
突然、「マダム、マダム」と呼ばれ、携帯電話で自撮りする風のジェスチャーで「OK?」と聞かれた。どうやら一緒に写真を撮りたいらしい。「OK」と返事して、写真に入った。すると、周りにいた人たちも、自分の携帯電話を取り出し、いっせいにこちらにやってきた。次々に写真を撮られる。全員ツーショットが欲しいらしい。あっという間にインド人たちに囲まれてしまった。とても嬉しそうにしてくれるので、断れず、しばらく写真大会になってしまった。
そうこうしていると、マイクでしゃべる声が聞こえてきた。いよいよゲームが始まるらしい。
1つ目はイス取りゲーム。
グラウンドの一角に、おもむろに円形にイスが並べてある。子ども達がその周りをぐるりと囲んだ。ルールは、日本のゲームと全く同じ。ただ、明らかに違ったのは、リズム感が半端ないこと。イスの周りを回るときに、音楽に合わせながら軽快なステップと手でリズムを取る様子は、子どもとは思えない身のこなしだった。順調にこどもの回は終わり、次は女性の番らしい。これは、と思い、参加してみることにした。
音楽が鳴る。歩く。音楽が止む。イスに無事座れる。......実は私は、子どもの時から気づいていたことがある。中央にマイクを持った司会者のような人が実況中継をしていて、その人が腕をあげると音楽が止まるのだ。私は回りながら、常にその人を見ていた。腕を上げそうになったらイスのところでゆっくり歩く。それを見抜いていたので、順調に勝ち進んでいた。イスの数もかなり減ってきた。
ところが、人が減っていないように見える。音楽が鳴る。歩く。音楽が止む。イスに座る。座れなかった人がいる。イスが減らされる。音楽が鳴る。歩く。座れなかった人も歩いている。音楽が止む。イスに座る。そしてまたイスに座れなかった人も、シレッと参加する。
なんということ! それじゃあ意味がない。おかしくて笑ってしまったが、人数が減らないことに気づいた司会者が、やっとイスに座れなかった人を見極めて、「輪から外れなさい」と注意し始めた。ところが強気の女性は、いったん外れたふりをして、音楽が鳴るとまた参加しようとする。
さすがインド人は心が強い!と唸ってしまった。そんなことを考えていると、私はついにイスを逃し、負けてしまった。
次に始まったのは綱引き。
こちらは、基本男性が参加するようである。みんなわーっと綱の周りに集まり、適当に持ちはじめた。え? チーム分けとかしないの?と思ったけど、そんなことはどうでもいいようである。適当に持って、急に適当に引っ張り合いが始まるので、人数が多い方が勝つ。じゃあオレはあっちへ行く。など適当に移動しはじめる。適当に引っ張る。人数多い方が勝つ。こんな具合を何度か繰り返し、結果、ほとんどの人が自分が勝ったと言い出した。
勝った人には何かがもらえるらしく、賞品を渡す人の周りに人だかりができる。何か特別なものを持っているようには見えなかったが、拾集がつかなくなって、賞品係が逃げ出すと、みんながついて回り、その人を中心に、大きな人の塊がグラウンドをウロウロし始めた。しばらくそれで大騒ぎ。その横で、また写真攻めも始まり、私も別の塊となってウロウロしていた。
再び、なんとか振り切って、落ち着くと、グラウンドでは同時多発的にみんなが適当に好きなことをやり始めていた。サッカーをしていたので見ていると、こちらも特にチームはないようである。全員がボールを追いかけて、近くのゴールに入れるのみ。キーパーはいない。でも、全員めちゃくちゃ真剣だ。ボールを蹴りたい一心で動いている。そして笑って見ている私は、またうっかり写真攻めに遭ってしまう。
ほとんどが私と同年代というのが驚きだ。あまりにインド人が無邪気なことに感心してしまった。どんなゲームにも真剣で、思い切り楽しんでいる。ルールは無用! 何が勝ちかどうかは自分たちで決める! 最高に愉快だった。
私は写真攻めに疲れてしまい、先に退散したが、後で友人に聞くと、最後に表彰式があったらしいのだが、多くの人がゲームに勝ったと言い張り、ものすごく長い長い表彰式となったらしい。